顔面の神経に麻痺が生じる顔面神経麻痺
顔面神経(顔の筋肉を動かしたり、唾液・涙の分泌を促したりする神経)に麻痺が生じる疾患です。
顔面神経麻痺は脳幹から細長い骨のトンネルを通っていますが、この通り道のどこかに障害を受けてしまうと、顔面神経麻痺が発症します。
顔面神経麻痺の原因
顔面神経にある神経節に潜んでいるウイルスが神経を傷つけることで、神経炎が起き、顔面神経麻痺を生じると言われています。神経節に潜んだウイルスはおもに、単純ヘルペスウイルスや水痘・帯状疱疹ウイルス、サイトメガロウイルなどがあります。また、自己免疫疾患や外傷、腫瘍、中耳炎、内耳炎、耳下腺がんなどの疾患も原因になると言われています。
神経の疾患なので、早急に原因を特定し、適切な治療を速やかに行う必要があります。
顔がゆがむ!?顔面神経麻痺の症状
- 顔がゆがんでいる
- うがいをすると水が口から漏れてしまう、汁物・飲み物がうまく飲めない/li>
- まぶたが閉じられない
- 眉毛が下がりっぱなしになる(または片方の眉毛しか上がらない)
- 顔の左右半分のどちらかが、力を入れたくても入らない
麻痺の程度は個人によって異なり、発症してから二週間ほど経過してからはっきり分かります。
顔面神経が脳幹に出るまでに異常が起きたものを「中枢性麻痺」といい、脳幹からトンネルにかけて異常がおきたものを「末梢性麻痺」といいます。どちらの麻痺も、神経ブロック治療で改善させる必要があります。 また、顔面神経麻痺と似たような疾患として「ハント症候群」も挙げられます。ハント症候群は顔面神経の炎症で麻痺が生じるだけではなく、耳周辺の痛みや水泡も併発するのが特徴です。
顔面神経麻痺の治療
薬物治療
治療は、薬物治療(西洋薬・漢方薬)から始めていきます。漢方薬は西洋薬との併用処方も可能です。
神経ブロック治療
薬物だけでは完治が難しい痛みには、神経ブロック注射で緩和させます。
顔面神経麻痺は、顔面神経の働きが悪くなったのが原因なので、星状神経節ブロックで治療していきます。
星状神経節ブロックを行うと血管が開くので、血流が増加して酸素・栄養が身体に行き渡るようにすることができ、後遺症を防ぐことができるようになります。
顔面神経麻痺Q&A
顔面神経麻痺は、治療を行わずに自然と治ることもあるのですか?
軽度の顔面神経麻痺でかつ、合併症が発症していない場合は、自然と治ることもあります。しかし、進行すると完治させるまで時間を要するようになってしまうので、初期症状の段階で受診することをお勧めします。
後遺症はいつから現れますか?
病状の進行が早い人は、発症してから一カ月程度で後遺症が現れます。だいたいの人が3~4カ月後に後遺症が現れます。後遺症を予防するためには早急な治療が大事なので、気になる症状がありましたら受診してください。
発症してから視力が低下したように感じます。
顔面神経麻痺で兎目(まぶたが閉じられなくなる疾患)になり、角膜炎や角膜の曲率半径の変化が起きることで、視力低下が見られることもあります。点眼薬や眼軟膏による治療で様子を見ますが、症状によっては眼科へご紹介します。
顔面神経麻痺の治療で、普段から気を付けることはありますか?
顔面の動きが回復し始めた時は、なるべく目を大きく開くよう意識してください。また、目と口が一緒に動いてしまう後遺症を防ぐために、目を閉じるときは一緒に口を動かさないよう意識しましょう。 他にも、一日に数回、手で顔面の皮膚と筋肉のマッサージを行ったり、温めたタオルを麻痺している顔にあてたりして、筋肉萎縮を防ぎながら血流の循環を良くしましょう。